私が現在使っているキーボードです。使い込んだのでホームポジションのキーのほか、スペースキーや右上方のBackSpaceキーなどの表面のプラスチックが光って見えます。このキーボードにはキーとキーの間に仕切りがありません。少し打鍵音が出ますがタッチタイピング練習用(もちろん日常用)として使うのにはこ形式のものが優れています。稽古事はまず道具選びから。ゆめゆめノートパソコンでタイピングの練習をしてはいけません(後述)。
はじめに
私の実力はプロの半分
目にも止まらぬ速さでスマホに文字を打っている人の動画をネットで見ました。私にはとても真似の出来ない芸当です。
しかし、パソコンのキーボードでなら私はもっと速く文字を打つ自信があります。スマホでやるような人差し指一本では誰がやっても1秒に3文字以上は打てません。しかしキーボードのタッチタイピングでなら、1秒3文字(36 wpm*)は”並”のレベルなのです。試みにえネットで見付けたソフトで測ってみた私のタイピング・スピードはノーミスで約 30wpmでした。30wpm はプロのタイピスト(60wpm)の半分の実力ですがシロウトとしてはこれで十分です。
(* 註:wpm とは1分間に打てるワード数。1w (ワード)はアルファベット5文字。1分間、すなわち60秒で60w(5 × 60 = 300文字/分)はすなわち秒速 5文字。これをノーミスで5分続けるのは1.500回キータッチをして一度も間違わないというプロならではの業。)
キーボードとの出会い --------- 私の場合
タッチタイピングとは
指にキーを覚えさせ、キーボードをまったく見ないでキーを打つことをタッチタイピング(またはブラインドタッチ)と言います。
指がキーを覚えているわけではなく、訓練によって反射的に指が動くようになった状態なのですが、わかりやすいので本ブログでは、指が覚える、と表現します。私のフィーリングとしては指が意志あるもののごとくキーへ飛んで行きます。手続き記憶という誰もが持っている潜在能力を引き出したものです。
タイプライターを買った日
コピー機などまだ何処にも無かった昭和の時代、駆け出し研究者だった私には、大学の図書館で借りてきた雑誌の英語論文を書き写すためにタイプライターが必要でした。そんなある日、たまたま研究室へ売り込みに来たセールスマンに勧められて毎月 500円の 2年月賦で買ったブラザーの機械式タイプライターが私とキーボードとの最初の出会いでした(私と同年配だったこのセールスマンに今、何とお礼を言ったらよいのだろう)。付属していたテキストでタイピングを自習しました。まずホームポジション(後述)とは何かを知り、左人差し指で fffffff (打つキーは F ですが、shitキーを押さないで打てば印字は f となるので以下の記述もこれに準じます) と打つことから始めて正しいタッチタイピングを身につけることが出来ました。しかし、機械式タイプライターでは、指の力が弱い小指で打つ a と p の文字が薄く印字されるなど、投稿用の原稿として使うにはみっともない仕上がりになりがちでしたし、なまじ腕が上がって速く打てるようになると、文字キーを支えているアームが絡まって打ち損ないのもととなり、しかも1 文字でも打ち損なうと修正が大変でした。しかし、兎にも角にもこのブラザー・タイプライターのお蔭で私はタッチタイピングを習得できました。後日、投稿用の論文を何本も書き上げるために知人が差し入れてくれたのは1975年当時で30万円もした IBM の電動タイプライターでした。小指も確実に受け止めてくれた IBM のキーボードの感触は今でも忘れません。その後時代は進み、タイプライターの機能を全部カバーしたワープロが使えるパソコンの時代となり、使うキーボードは PC-8001 に始まって PC-9801VM2 のものへと移り、現在に至っています。
このように、私が研究者として現役時代の前半は、(英文)タイプライターの時代でした。当時キーボードを打つのはタイピストという華麗なるプロフェッショナルの仕事であって、私のようなアマチュアでタイプを打つ必要があるのは、(タイピストを雇う機会もお金もない)研究者とか、英語を生業にする人などごく限られた人たちでした。そういう人たちは自分の職業上の地位を維持するために必死でキーボードに挑戦したのです。
あてがい扶持のパソコン・キーボードをどう受け止めるか
ですから、昔はタイプライターを打つ必要に迫られた人だけが、自らの意志で(タイプライターを入手して)キーボードとの付き合いを始めました。それが今の時代では、職場や学校でパソコンをあてがわれたり、自宅でパソコンを買うなどするとキーボードなるものが付いて来るので、主に Office の Excel や そのほかの仕事上のソフトを使う必要上、或いはゲームを探すために、やむを得ずマウスと一緒にキーにも触るというのが大方の大人のキーボードとの付き合い始めだと思います。そういう受け身の状態でキーボードに出会ったにもかかわらず、真っ先に fffffff、或いは aiueo (後述)などを打ってタッチタイピングの習得を目指す人はそう多くないと思います。
ネット記事で、今の社会人にタッチタイピンが出来るかどうか尋ねたところ3,4割が Yes と答えたと報じられていますが、あり得ない数字です。まあ何とか我流で、という人も Yes と答えたのでしょう。本当に正しくタッチタイピング出来る人は 1割がいいところだと私は思います。
4割も出来る人が居る世界ならこんなブログは書きません。余計なお世話というものでしょうから。
なまじ我流のタイピングでやってきた人の殆どは、正しいタッチタイピングを勧められても、絶対と言ってよいくらい耳を貸しません。仲間でそういう人を何人も見てきました。正しくない手続き記憶は身につくともう元に戻れないという怖さがあります。
何事も初めが肝心です。キーボードで文字を打つ必要に迫られた最初の段階で、是非正しい(標準の)タッチタイピングを覚えましょう。初めはホームポジションに手を置くだけで良いのです。どうしても今日すぐ字を打たなければならないというときは、我流の始まりにならないよう指一本で打ちましょう。そして後で正しいホームポジションの練習を始めて下さい。我流という悪癖を持たない初心者には簡単です。ヤル気があれば大抵一ヶ月、長くても三ヶ月以内に習得できます。以下でその具体的方法を紹介します。
タッチタイピングは一日で覚えられる!
古典的なタイプライターと現代のパソコン
基礎知識(頭で覚えること)
正しいタッチタイピンを習得するのに必要な基礎知識は以下のワンブロック10行あまりだけです。机の正面にキーボードを置き正しく椅子に座ります。
まずホームポジションの意義を覚えます。キーボードには中段中央寄りにある、F と J のキーに(だけ)は突起がありますので両手人差し指(示指)で探して指を置きます。そうすれば自然と左手は中指が D、薬指 S、小指 A、右手は中指が K、薬指 L、そして小指は;(セミコロン)の上に乗ります。これがホームポジションです。キーを打ち始めるとき、打ち終わったときは FとJ キー の突起を示指で探って必ずここへ手を戻します。必ず。
ホームポジションに指が置けたら次は、テキスト或いはネットの図などを見て、上下段の各キーをどの指が受け持つかを確認して下さい。その約束は二つ、1.ホームポジションからそのまま(やや左へ傾斜して)指を上と下へずらせばそれが上段と下段での各指の受け持ちキーです。 2.示指だけは左右ともそれぞれの内側のキー(左示指は F の右隣 G 、上段では R とT、下段は V と B、同様に右手示指は H と J、上段では Y と U、下段は N と M の)それぞれ二文字ずつを受け持ちます。タッチタイピングの指使いの基本的規則はこれで全部です。アルファベット26文字(とカンマ、ピリオド)=右下段、中指と薬指)が打てるようになれば、以下に述べるような数字キーなど若干の追加は何とかなります。まずはホームポジションに指が乗り、アルファベット26文字が打てるようになればそれで十分。
アルファベット・キーの一つ上の段にある数字キーと、 0 の右にあるハイフン(右手小指で打つ)は出来るだけアルファベットキーと同時に覚えましょう。数字キーは左右の中指がそれぞれ 3 と 8 だと意識して3 と 8 が打てさえすればあとは全部自然に打てるようになります。
アルファベットキーよりも右外側にあるキーのうち、1番右の EnterとBackSpaceキーはすぐ必要になります。一般的には右小指が受け持ちとされていますが、これらのキーは文字入力用のキーではなく、編集用として打つというより「押さえる」キーです。それら編集用のキーは100パーセント打ち損なわないように自分が打ちやすいと思う指で打つのがよいでしょう。私は手探りで最も探しやすい右中指を使っています。EnterキーやBackSpaceキーを小指で打とうとすると右手がホームポジションを離れてしまいます。どうせ離れるなら頼りない小指ではなく、確かな手応えが得られる中指(または薬指)が適当です。左shift キーは小指、右は中指と薬指です(小指でやると手がよじれます)。キーボード左端のEsc、英文/和文キーは左手中指で押さえています。
あとはトレーニング(指に覚えさせる)
1.タイプライター時代からの伝統的方法
二十歳前後の若者が、
その気になればアルファベット26文字のキーをそれぞれどの指が受け持つのかの基本は一日あれば”頭では”覚えることができます。朝教えたらその日の夕方では何とかキーボードを見ないで26文字を打てます。何人かの若者に教えましたから間違いありません。しかし、誰でも3日も経つとアルファベット全26文字の指使いを正確には思い出せなくなります。
キーの位置を覚えたら、しばらくの間、最低1ヶ月ぐらいは毎日10分間でよいからキーボードで何か文字を打ってみましょう。
その昔、タイプライターを買った私は、
テキストの指示通りまず、
ffffff jjjjjj aassddffgg yhmyhm inouetaka
などとアルファベット26文字を打って指にキーを覚えさせる努力はしていました。しかし何時の日か途中でこの退屈な作業に飽きて、次の段階、つまりテキストに載っている幾つかの
短文を打っていたような気がします。そのトップに載っていたのが次の文章でした。
The quick brown fox jumps over the lazy dog.
これは何度も打って練習したので今でも覚えています。アルファベット26文字が一通り一度は含まれているので、指が全部のキーを覚えていないと打てません。英語の「いろは歌」です。
短文を打つ練習をするとき、打つ前後確認のためキーボードを見てもかまいませんが、文字を打っている間は見てはいけません。ここが大事なポイントです。そのうち徐々に指が文字を覚えている状態になってきます。タッチタイピングが本当に身につくまでの期間は人によって違うでしょうが、短くて一週間、或いはひと月ぐらいかかるかも知れません。繰り返しますがタッチタイピングが出来る、というのは「指が勝手に文字を打ってくれる」ことなのです。
ここに書いたようにその入り口は驚くほどやさしいのですが、身につくまでにはそれなりの努力と若干の時間は必要です。そして結果、一旦身につくと指はキーを忘れません。
2.パソコンで日本語ワープロを使う今日的方法
以上が(英文)タイプライターでタッチタイピングを習得するためにやってきた古典的な方法です。
最近、パソコンの日本語(ワープロ)入力からタッチタイピングを習得するやり方として、「あいうえお」から始める方法が紹介されているのをネットで見ました。まずホームポジションと正しい指とキーの対応を覚えるのは同じですが、fffff などと打つタイプライター用の古典的な練習の代わりに、
aiueo(あいうえお)つまり、日本語母音の 5つのキーの指をまず覚え、それが出来たら、
kakikukeko (かきくけこ)で K を、sasisuseso で S を、tachitutetoでT を、
と順番に覚えて行き、いずれ akasatanahamayarawa 、okosotonohomoyorowo、chachichuchecho などが打てる、というふうに練習する方法です。指にキーを覚えさせるという目標は同じですが、私が通って来た「 fffffff から英語短文」という道とは少し違います。でも、 日本人には ffffff などよりはよほど取っつきやすいような気がしましたし、タイプライターでは出来ない)ワープロ時代ならではのやり方として「こんなうまい手があったのか」、とは強く思いました。ならばタッチタイピングもワープロも全部習得済みの私には簡単、簡単!、とばかり「いろは歌」を打ってみました。
いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ つねならむ うゐのおくやま けふこえて あさきゆめみし ゑひもせす ん
irohanihoheto chirinuruwo wakayotareso tsunenaramu uwinookuyama kefukoete asakiyumemishi wehimosesu nn
上記の下段のようにローマ字を一気に打って楽勝 ! の筈が 2 カ所ミスしました。「ゐ」をwiと打ってアウト、「ゑ」も we と打って失敗しました。それぞれ wyi と wye と打つのだとは、このブログを書いて始めて知りました。何と、今まで「ゐ」と「ゑ」の2文字を打ったことがなかったのです。キーの打ち損じではないので、今後打鍵の猛練習が必要、ではないのですが、まさかワープロ」知識不足で躓くとは誠に残念です。
いろは歌を打ってみて aiueo からスタートする現代のタッチタイピング練習方法はワープロも同時に学べる優れものだと納得しました。
以上、古くからの方法にしろ、最近のやり方にしろ、タッチタイピングのガイドブックは幾つも販売されているようですし、ネットでは参考になる良い記事がいっぱい公開されています。
富士通FMVのページの記事などは優秀です。指使いの練習もパソコンが相手をしてくれます。
ノートパソコンはタイピングの練習に適さない
キーボードを選ぼう
ノートパソコンはキーボードの練習にはまったく適していません。キーピッチ(隣のキーとの間隔)が狭い上、キーストローク(押し下げられる距離)が約1~2mmtとデスクトップ用のキーボード(約4mm)に比べて非常に浅いからです。その上パンタグラフ型というキー支持機構の性質上やや押し込むのが硬いかまたは妙に柔らかいこともあり、それやこれやで打鍵した、という実感が指から伝わってきませんのでミスタッチが多くなり気分が削がれ手も疲れます。ノートパソコンを使っている人は、デスクトップ用のキーボード、それも薄型は避けて、このブログの写真のような、”キーとキーとの間に仕切りが無いタイプ”を用意してください。デスクトップ用でも仕切りがあるのは構造がノートパソコンと同じなので、打鍵音が小さいというメリットだけで職場で多く採用されますが、自宅での個人用は(多少音はしても、昔のタイプライターに近い)確かな打ち心地のものが良いのです。
写真のキーボード(ELECOM TK-FDM063)のメーカー公表仕様は、メンブレン式キースイッチで、キーピッチ19.0mm、キーストローク4.0mmと、昔からある最も標準的なパソコン用キーボードです。ワイヤレスですが 3,000 円以下でした。
この内容でブログを書こうとは以前から思っていました。そして第一稿を考えながら一気に書き上げるのに要した時間は約3時間でした。
約3000文字/3時間。計算すると約 8wpmです(カナは1字2ワードとする)。なお加筆推敲後の本ブログは約 6000 文字あります。
是非タッチタイピングを身につけましょう。
(使ったワープロソフト等 「tWord」、「ATOK2017」、「一太郎2006」