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このブログを読んで下さっている関西の方へ質問です。「東京みやげには何がいちばんだと思いますか?」
正解は「草加せんべい」です !
東海道新幹線の改札を入っていちばん目につく所に屋台の店があって、そこで売っているのが草加せんべいです。東京から地方への手土産に、あるいは東京への出張帰りの家族へのお土産などにこれほど適したものはほかにありません。
草加せんべいは関東では最もなじみ深い菓子(米菓)です。東京の子供たちは草加せんべいを食べて育ちます。では関西人の私が何故草加せんべいなのか、の話をしてみます。
私は生まれは東京です。九歳まで東京で育ち、以後父祖の地である奈良に帰って来て大阪の大学を出てから母校の教師をやって、定年後の現在に至っています。零歳から東京で言葉や食事などの東京人として生きるための文化を身につけてから、異文化(?)の関西に移って成人したというわけです。現代では、外国で生まれ育ってから、帰国子女として何カ国もの文化を身につけたすごい人も多いと思いますので、それに比べれば私の経験などは些細なことでしょうが、関東と関西の間にでもあるちょっとした文化の違いを考えてみるのもまた一興かと思いました。
大学の授業で謦咳に接した民俗学者梅棹忠夫先生(助教授=当時)に倣って、私は現役の教師時代、授業はガチガチの関西弁で押し通したのですが、今でもかすかに江戸訛りは残っています。
大学に入学して奈良の山奥から国鉄城東線(現在のJR環状線)天満にあった学校に通い始めて間もなく、ふと駅の広告に気付いて仰天しました。それは「ひちや」と仮名を振った質屋の看板広告でした。「質」を「ひち」と読むなど私にはとても「正気の沙汰とは思えない」ことでした。できることならその質屋さんへ「しちやに直せ!」と怒鳴り込みたいくらいでした。しかし、よくよく考えてみれば、私はもうその頃は数字の「7」を関西弁で「ひち」と発音していました。でもでもです。私は今でも「人」を「シト」と発音していることがあるのを自覚しています。治りません。中野区江古田国民学校一年生の時、担任の梅津先生の試験問題に「人」の読みを「シト」と書いて100点を逃し、「ボクは間違っていないのに」と大いに不満だった、その時からあまり進化はしていないのです。「質、七、人」を一気に読めと言われたら私は多分「シチ、ヒチ、シト」になります。生粋の江戸っ子は「シチ、シチ、シト」、関西人は「ヒチ、ヒチ、ヒト」と言うはずです。全員落第です。正解は言うまでもありません。
関西と関東では食文化にも大きな違いがあります。東京ではあの美味しいハモ(鱧)を食べないそうです。ハモは江戸前(東京湾)では獲れない魚なので、骨切りの料理人もいないとのことです。気の毒に東京人はハモを食べたことがないのです。一方、関西では納豆を食べない人が多いです。今はどうだか知りませんが、私が子供の頃は東京の住宅地に毎朝やってくるのは新聞配達と納豆売りでした。
前置きが長くなりました。やっと草加せんべいの話です。
戦後の混乱期が終わり、お菓子が手に入るようになって、奈良に落ち着いた私がいちばん欲しかったのは幼い頃なじんだ草加せんべいでした。自家製のかき餅、やがては菓子店で「おかき」や「あられ」が手に入るようになっても、草加せんべいをゲットする手立てはありませんでした。
上方のおかきは高価なもちごめ(糯米)を材料にしていて、餅を小さく分けてかき餅やあられの大きさ、形にしていろいろな味付けを施し焼き上げるものです。平安時代には既にあったとされ、たかだかこの百年ぐらいの歴史しかない草加せんべいとは、種類の多さ、完成度の高さがまるで違います。草加せんべい(煎餅)はご飯用のうるち(粳米)を粉にして蒸し、平たい団子に成形して醤油で味付けして焼き上げたものです。焼いても粳米はあまり膨らまないのでとてもかたく、お米と醤油の味しかしません。醤油の吟味や、生地に胡麻を混ぜたり、海苔を貼り付ける程度で店によって多少の味の差はあるにせよ皆その素朴さこそが売りのようです。「ダサイタマ」と揶揄される埼玉県、その草加市辺りを起源とする所以でしょうか。それやこれやで関西人にとっては、おかきで十分間に合っていて、草加せんべいは知らなくても何ら不自由しないもの、あるいはせいぜい東夷(あづまえびす)が好む”在所のおかき”ぐらいの認識だと思います。
しかし私は断然草加せんべい。この件に関する限り、九年間育ったお江戸の影響は大きく、私の価値観は揺るぎません。
読んで頂いて有り難うございました。これは「煎餅」の広告ではなくて「文明」論のつもりで書いた文章です。
関西では、盆正月にはどこかから舞い込んで来るおかきとは違い、草加せんべいは自分の意志で探さないと向こうからは決してやってきません。そこで草加せんべいを最近ネットでちょっとたくさん買いました。お正月に東京圏から帰ってくる孫たち、と私のために。写真の品物は一枚が30円ほどでした。