Nikon D50 Nikkor 55-300mm(300mm) f:5.6 1/800sec. ISO=400 July22th 撮影
夏がやってきた!ことを音で告げてくれるニイニイゼミ(Platypleura kaempferi)です。私の部屋から数メートルの樹にとまって「チー」と鳴いているところです。ニイニイゼミは体長2センチほどの小さな蝉です。少し姿勢を高くして羽根をわずかに拡げて鳴くのはどの蝉でも同じです。私の田舎では7月上旬にまずニイニイゼミが、わずかに遅れてヒグラシが鳴き始め、次いで7月中旬以降アブラゼミ、8月中旬頃からミンミンゼミとツクツクボウシが加わり、9月終わり頃彼らの鳴き声が少なくなって情緒ある「音」の夏が終わります。奈良市や大阪市など関西都市部の暑苦しい騒音の主、クマゼミはわが村には居ません。なお、大都会でも東京では中心部でもミンミンゼミが聴けるそうですが、大阪市内で聴くことはないとされています。大阪が自然を失ったことを物語っているのでしょうか。残念なことです。
松尾芭蕉の名句中の名句、「閑さや 岩にしみ入る 蝉の声」(立石寺)に詠まれた蝉はニイニイゼミだ、と文人たちが昭和の初め頃談合で「決め」ました。芭蕉が(鳴き声を)メモしていたわけではないので今や真実は誰にも分かりません。私はニイニイゼミよりヒグラシがこの句の情緒によりふさわしいと考えていますが、ヒグラシ説を唱える人は誰もいません。その理由としてひとつ考えられるのが俳諧独特の「季語」という決まりです。俳句の世界では何故かヒグラシは秋の季語になっていて、夏(厳密には立秋以前)の風物から除かれています。この世界の人々は伝統(因習)にこだわっているのか無知なのかはわかりませんが今までこの明かな間違いを改めようとはしていません。また、立石寺の蝉について最初はアブラゼミ説を主張し、後に現地調査をしてニイニイゼミ説を容認した斎藤茂吉はアブラゼミとニイニイゼミの違いは認識できたかも知れませんが・・・おそらく芭蕉もそうだったように・・・ヒグラシとニイニイゼミを一緒くたに聴き取っていた可能性があります。ニイニイゼミが鳴いている近くにヒグラシ居るとは限りませんが、ヒグラシが鳴いている近くではほぼ間違いなくニイニイゼミも同時に鳴いているものです。蛇足ながら、奥の細道によれば、芭蕉が立石寺に登ったのは夕方だったのです。(→http://uda.ehoh.net/higurashi.html)