「われらが宇陀地方は暖地の果物みかん(蜜柑)の北限であると同時に寒冷地の果物りんご(林檎)の南限でもあって、どちらもそれなりに収穫できる類い稀な場所だ」と、桜井市にある農業大学校の友人 N君が昔教えてくれたことがあります。海抜340メートル(大宇陀中学校の位置)の高所にある宇陀市は、10キロメートル西に拡がる奈良盆地に比べればスズランの自生地があるなど確かに寒冷地の特徴を多く備えています。でも、さすがにりんごが実っている風景は滅多に見ませんが、みかんは畑の隅などに一本二本と植えられているのを見かけます。みかん農家はありません。因みに我が国の北緯で云うと、みかんの北限は日立市辺りだとされていますので、わが宇陀山地は関東北部、または東北南部の平地並だということになるのでしょう。
ところで、みかんという果物の各部分(パーツ)の名前を知っていますか。「皮」と「房」などですね。正式にはこれらには少し難しい名前が付けられています。付け焼き刃の知識ですが披露しますと、まず冒頭の写真に写っているいわゆるみかんの皮は外果皮(フラベド)と呼び、その内側の白い部分が中果皮(アルベド)、食べるつぶつぶの果肉が砂瓤(さじょう)、それを包んでいる薄皮の房を瓤嚢(じょうのう)と云い、その外にある白い筋が維管束なのだそうです。
昔から私ども医者や農学関係者は、”難しい漢字を使う割りには読み損なう(一例:口腔)など、漢字に非常に疎い”と云われてきました。その農学関係で、今時これほど難しい字を実際に使っているのには驚かされます(註)。
「さあ、外果皮を剥いて、じょうのうを一つずつ咥えて、さじょうを吸い出して食べましょう。また、栄養のある維管束を付けたまま、じょうのうをまるごと咬んで食べるのもお勧めですよ。」
みかんの「選び方、食べ方」は”国が指導”しています。下記の農林水産省のホームページを見てください。国(役所)から何かのときに送られてくる難解かつ無愛想な文書などとは比べものにならない楽しい”文書”です。見る価値は十分にあります。
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1701/spe1_05.html
註:瓤(じょう)=柑橘類の実の中の房に分かれた部分(新潮日本語漢字事典1472ページ)