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写真1.iPhone12mini (March 31th)
私の田んぼで採れた 「ひとめぼれ」 のおにぎりです。透明感のあるご飯粒が光って美味しそうです。
お米とご飯の話
1.一人で食べるお米の量、そしてそのお値段
私は 面積 1反(≒ 1,000平方メートル ≒ 300 坪 ≒ 10a)あまりの田を 1 枚を持っていて、そこから毎年 30㎏入りの米 25袋(たい)、すなわち総量おおよそ 750kg が収穫できて自家用に供しています。事実上は親戚の大規模農家にお任せなので経費、値段ははっきりしませんが、去年までの世間の相場、すなわち 30㎏ ざっと 1万円円としてみるとわが家のお米は全部で 25万円ほどになるようです。これを家内全員約15人ほどで分けると、ひとりが年 60㎏を食べ、それを若し買うとすると一人前年2万円ほど、月にすれば 5㎏、2,000円が1人の米代金という計算になります。以下はこの数値を基準にした考察です。
古来、米は年1人1石(こく)食べるもの、とされてきました。1石は 150㎏です。むかしの人はわれわれの3倍も食べていたことになります。近代日本になってからは、農水省によれば昭和37(1962)年に1人 118.3㎏という消費のピークがあり、それが今では年 50.3㎏ が国民ひとりあたりの米消費量だとされています。パン食が増えたことなど食文化の変化や少子高齢化などによるものだと考えられます。
日本の米生産量は年700万トン(t、正確には 679万 トン 農水省2024年)です。これを1億2千万の人口で割ると、国民ひとり1人に行き渡る米の量が計算できます。700万(t)÷ 12,000万(人)=0.058(t) = 58 kg/人です。これで大凡 50 ~ 60㎏ が国民ひとりあたりの米の消費量だということが確かめられました(年齢差などは誤差範囲とみて計算上無視)。
しかしこれは、見方を変えると、日本の米生産量が国内消費で収支トントン、つまりコメのj自給率は辛うじて100パーセントだとしても、何かあるとまったく余裕が無くて、たちまちピンチになることも意味しています。世界に冠たる品質のジャポニカ米ですが当然輸出も無理です。
日本の米収穫量は1970年には1,250万トンあったものが 今は700万トンにまで減っているのです。減反政策など農政の在り方が今も厳しく問われています。
1993年、本来余力のあった米を年間生産量を減反政策で 1,000万トンに減らしているとき冷夏に見舞われ、783万トンしか収穫できませんでした。平成の米飢饉と呼ばれています。これに懲りたわが国は、備蓄米を制度化して米100万トンを緊急時のために国有財産として常に用意しておくことにしています。毎年その年の新米20万トンを補充し、古い方から20万トンずつを家畜飼料用などとして放出しています。その中でこの度の令和の米騒動が起きました。
去年始めまで 5㎏ 2,000円ほどだった米の値段が高騰し、5,000円、6,000円はあたりまえという狂乱状態になっています。猛暑による不作 ?、コロナ明けで押し寄せた外人観光客が食べた?、などの噂が流(さ)れ、そのため JA全農の集荷量が 21万トン減ったとか、誰か何かが値上げを煽っているのでしょう。政府はこれを品不足と断じて、競争入札(高値を提示した業者《95%がJA》に売る方法)で公称100万トン(実数 91万トン)ある備蓄米のうち 21万トン(あとで10万トン追加)を5㎏ 2,000円余りの高値で放出しましたが、一ヶ月後でも小売店頭には放出量の1.4%しか届かず、小売り価格を下げることはまったくできませんでした。農家から集荷する JAに始まり卸(5段階あるとされる!)と小売りに至る流通の各段階で意図的隠匿とマージン稼ぎで価格のつり上げが行われているのは容易に想像がつきました。
天の配剤と言うべきか農水大臣が交代し、やり方を随意契約(安い価格を提示した業者《まず大手小売り業》に直接売る方法)に変えた備蓄米は流通の邪魔が除かれてスピードが上がり放出直後から店頭価格 5kg 2,000円を目指す事態になっています。
ただ、備蓄米は100万トン全部を一気に放出しても国民1人当たり10kg(年必要量の20パーセント)、または国民 5人に1人の一年分にしかなりません。しかももはや放出できる備蓄米は22年産古古米 20万トンと21年産古古古米 10万トンになるとみられます。量的、質的ハンディを持つ備蓄米が今市場にある銘柄米の価格を下向きに引っ張れるものかと心配になります。一説には、安い備蓄米と現在の価格を維持しようとする不当に高い米が共存して層別化されるかも知れないという観測があり、それだと全体の価格は下がらず、備蓄米を出してきた意味がなくなります。今米は余っていて、どこかに隠匿されており、値段(米は古米になる前に必ず値下がりする)さえ問題にしなければ備蓄米がなくても国民が飢える気遣いだけはありません。
2,000円の備蓄米が店頭に出てきたら、奪い合いをしないで粛々とこれを買い、ばか高い銘柄米を当面は”店(たな)ざらし”状態にさせる、これが私達が今できる唯一最強最強の対抗手段だろうと思います。随意契約による備蓄米の全放出量は 30万トンでした(あと30万トン残っています)。100万トンなら全国民の1/5年分(ほぼ2ヶ月分)がまかなえることは上に述べた通りです。30万トンならその3割の 20日(60万トンなら40日)が凌げます。手持ちの米と合わせれば計算上は何とか今年の新米まで高い銘柄米を買わないでいけそうです。
それはそうと、備蓄米は現農水大臣随意契約の古古米、古古古米ばかりが目立っていますが、前
農水大臣が競争入札で市中に出したはずの2024産新米、2023産古米の大半が行方不明のままです。本来は国民の貴重な財産です。関わった人たちの良心と覚悟が問われています。
去年まで銘柄米でも「米 5㎏ は 5,000円」ではなく「 2,000円」でした。そのことを忘れてはいけません。
2.米の銘柄
小売店の店頭で最も目につく米は「コシヒカリ」(1956年 農林100号の別名)です。現在日本の米生産量の 33パーセントほどが「コシヒカリ」です。粘り気があって甘口の美味しい米だとされています(私はそれとわかって食べたことがない)。次いで収穫量 2位から 5位までは、「ひとめぼれ」(10%)、「ヒノヒカリ」(9%)、「あきたこまち」(8%)、「はえぬき」(3%)と続き、これら5銘柄で全生産のおおよそ 60パーセントを占めています。今やコシヒカリは何ら特別の存在ではなく一番普通のお米なのです。
なお、「コシヒカリ」という名で販売されているのは単一品種としての従来からの「コシヒカリ」と、倒伏(収穫寸前に風で吹き倒されること)しにくく、いもち病(罹ると実らない)に強いように新潟県が品種改良した幾種類かの「コシヒカリBL」の両方があります。販売段階ではどちらも「コシヒカリ」として売られていて「魚沼コシヒカリ」など新潟県産はほとんどが BL のようです(Wikipedia)。一般の「コシヒカリ」と BLとに美味しさを含めお米としての品質の差は無いとされています。
わが家の「ひとめぼれ」は「コシヒカリ」と、倒伏しにくく、いもち病に強い銘柄「初星」との交配品種(1991年宮城県古川農業試験場産)です。味は「コシヒカリ」と変わらず、粒立ちが「コシヒカリ」よりすこし「しゃっきり」しているとのことです。ふつうの炊飯器で炊いて文句なしに美味しいとわが家全員の評価です。また、ご飯は炊きたてだけでなく、写真1のように握り飯にしたり、弁当にしたりと日常的に「冷や飯」になる、または冷や飯にする機会がいくらでもあります。
ですから、よい銘柄は炊きたてだけでなく、冷や飯も美味しくなければなりません。他は知らず、「ひとめぼれ」バンザイです(下段写真2)。
3.玄米と白米
わが家の米は玄米のまま、夏でも涼しい納屋で保管しています。それをときどき小分けして玄米のまま消費する子らの家に宅配便で送っています。
米は”生鮮食品”です。ひとたび精米して白米にしたものはできるだけ冷暗所に置き、一ヶ月で食べ終わるようにしましょう。家庭用冷蔵庫に余裕があれば、白米は冷蔵庫の野菜室に入れておくことが推奨されています。
4. 糖尿病の患者さんへ(内科医として)
米1合の目方は 150g です。ご飯として炊き上げると約 300g、480kcal です。糖尿病患者が一日に食べるご飯の量としては毎食100g(2単位)のこれぐらいが適当です。
ご飯 50g(茶碗半分)が1単位(80Kcal)です。はじめは秤で毎回正確に測って身につけましょう。茶碗一杯が100g(2単位)です。年齢、体重、運動量などによって 20単位前後が医師、栄養士によって指示されますのでそれに従いましょう。糖尿病患者さんは主食(炭水化物)はパンや麺類よりはどちらかと言えばご飯が適しています。粉からできているパンや麺類は粒子が細かい分消化吸収が早く、食後ご飯よりは急速に血糖が上がり、そのピークも大きいのです。粒食のご飯は腸での吸収がゆっくりなので食後の血糖上昇が軽くて済みます。
糖尿病の食事は、ご飯をどう上手に食べるかで決まります。そのためには日本糖尿病学会が出している「糖尿病患者のための食品交換表」(¥990)は患者さんだけでなく、糖尿病予備軍などを含め誰にとってもご飯を美味しく食べるための絶好の参考書です。絵本としても楽しいこの本を一家に一冊持っことにしましょう。
5.メダカとドジョウの話
わが家の田んぼの近くに小さな森の水を集めて流れ下る小川があります。川幅平均50センチ、水の量は目測毎秒 1リットルほど。地下水を水源にしているのか清流は絶えることがありません。ただ以前は、誰かの小さな田んぼが上流にあったのが残念です(今は耕作放棄)。私が子供の頃、その小川にはメダカ(ニホンメダカ or ミナミメダカ)が泳いでいました。また、メダカと同じぐらいの大きさの透明なエビ(カワエビ or スジエビ)も一杯見付かりました。それが農薬が使われ始めた頃にどちらもいなくなってしまいました。
私の田に水を引くための小さな水路にはかつてはドジョウの天下でしたが今では一匹も見かけません。
田んぼにはタガメやタイコウチとそれに近縁の水生昆虫がいましたが今はt多分絶滅しました。
それらの命はおそらく農薬によって奪われたものと思われます。私達が不自由なくご飯を食べるために支払った代償は大きかったのです。
私の田畑のある宇陀市は2022年11月にオーガニック・ビレッジ宣言をして、野菜の有機農業化、つまり化学肥料よりも堆肥などを使って農産物を作るんだ、と宣言しました。米作りにどれだけ有機肥料が使えるのかは私にはわかりませんが、かつての自然が戻ってくるのならこれほど嬉しいことはありません。
今、田舎の環境が 農薬以前と同じに回復してきているのなら、自治体は政策目標の一つとして、田園地帯のメダカ、エビ、ドジョウたちの復活を掲げて下さい。どこかそれらが健在なところから個体を分けもらって放流すればよいのです。できるだけ早くはじめて、復活させましょう。昔のように私の小川にメダカを、田んぼでドジョウを泳がせたいものです。
fig.2
写真2.IPhone 12 (May 25)
精米したわが家の「ひとめぼれ」。透明感のある整粒(粒の大小、形が揃っていること。70%なら一等米。写真の米ではほぼ100%)です。粉状質粒(白い未成熟の米粒)は一粒もありません。背白粒(胚の反対側が白い)はj若干見えますが文句なしの一等米でしょう。